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上島の遺跡⑰ 島での山城調査

2020年02月03日 有馬 啓介

 上弓削方面から見た「とみ山(山城)」(写真中央)

 テレビ番組や書店では、城に関する情報や記事を目にすることが多くなりました。訪日観光客の城の人気も高く、現在、空前の城ブームが到来しているようです。

 城として私たちが最初に思い浮かべるのは、天守や石垣、水をたたえた堀ではないでしょうか。全国では12城の天守が江戸時代以前に建築され、現在まで保存されています。平成27年に国宝に指定された島根県の松江城も現存天守の1つです。また、愛媛県内には松山城と宇和島城の2つの現存天守があります。しかし、そのような私たちがイメージするような城が築かれた期間は長くありません。織田信長の安土城は、天正4(1576)年から約3年の歳月をかけて完成しましたが、本格的な天守を備えた城はそれ以降に一般的となります。

 日本列島には3万か所以上の城館跡があるとされています。その多くは山の地形を利用した防御施設であり、山城と呼ばれています。山麓には普段の生活を営む居館がありました。

 弓削島の上弓削と沢津の境にある尾根上に「とみ山(城山)」と呼ばれる山があります。標高約130mの山で、その北には高浜八幡神社があります。この山は、『愛媛県埋蔵文化財包蔵地一覧表』(愛媛県教育委員会、平成12年)には、「城山跡」、「上弓削(弓削城山)城跡」と記載されており、弓削島で遺構が最も良好に残る中世の山城です。山頂部には平坦な曲輪(郭)があり、その西側を除く3方向には急斜面になるように人工的に削られた堀切(切岸)が見られます。今後の調査による山城の性格や築城年代の特定が期待されています。

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