かみじま郷土話⑦ 身近にある石造物
2021年06月01日 曽根 大地
畑に放置された五輪塔の一部
皆さんは石造物というものを見たことがあるでしょうか。私たちのまちには、お寺や墓地、畑など、いたるところに石造物を見ることができます。
上島町に住む人々にとって馴染み深い島四国のお堂などにも、石造物が安置されていたりもします。石造物には、五輪塔(ごりんとう)、宝篋印塔(ほうきょういんとう)、板碑(いたび)、層塔(そうとう)などの種類があり、いずれも塔の形を模しているのが特徴です。特に五輪塔や宝篋印塔は、墓塔や供養塔として造立されるようになり、中世には日本全国に分布したことから、石造物の代表的な存在となっています。
弓削島庄総合調査では、弓削島内にある石造物について調査を行いました。ほとんどは残欠ではありますが、113点の石造物の部材を見つけることができました。石材の調査により、15世紀初頭までに東泉寺や願成寺など弓削島の北部を中心に、松山方面や広島県南部の石造物が搬入され造立されていたようです。15世紀中頃になると、石造物の造立は島全体におよび、香川県の西部や瀬戸内海の沿岸地域から搬入されたものもみられます。
石造物といえば、上島町からほど近い広島県尾道市の存在を欠かすことはできません。尾道では、石造物の素材となる良質な花崗岩を産出し、また石細工を生業とした多数の尾道石工を輩出しました。尾道石工が制作した石造物は、尾道水道を通って遠隔地まで運ばれました。上島町においても岩城八幡神社の鳥居や、弓削神社の獅子狛犬にも尾道石工の銘をみることができます。
皆さんの身近にも石造物はあるかもしれません。もし見つけたら私に教えて下さい。