心躍るとき、秋祭り
2016年09月27日 有馬 啓介
再興を願う獅子舞(高浜八幡神社、平成27年10月) 宮畑周平氏提供
夜明け前の太鼓の音が鳴り響くと、今年もまたこの時節がやって来たという思いがします。空が深く澄み渡り、清涼の秋気が身にしみる10月、島々は祭り色に染まります。
上島町では、それぞれの島で秋祭りが行われています。また、弓削地域では、佐島や弓削島の中の各地区で独自の祭りがあります。中には中世的要素を残す頭屋(祭礼や神事などを主宰し、中心的な役割を果たす人や家)の制度が継承されている祭りがあります。
芸予諸島で行われる秋祭りの大きな特徴は、祭礼の主人公である祭神の乗る神輿の露払い役を務めるいわゆる「布団ダンジリ」にあります。『愛媛まつり紀行-21世紀に伝えたい郷土の祭礼-』(愛媛県歴史文化博物館、平成12年)によると、太鼓台は江戸時代に上方で発生し、文化・文政期頃に布団を積み重ねた形の太鼓台が、海上交通の発達と相まって西日本各地に伝播したようです。瀬戸内海の島嶼部では、装飾の簡素な太鼓台が各地に見られ、ダンジリと呼ばれています。一方、生名島や岩城島の秋祭りでは、破風屋根のダンジリが繰り出します。地区によっては、奴行列、獅子舞、曳きダンジリ等が秋祭りを一層華やかなものにします。上島町では、二人立ちの獅子舞が見られ、岩城島の海原獅子舞がよく知られています。また、魚島では、大漁獅子舞が奉納されてきました。近年その獅子舞は少子化のため途絶えましたが、昨年上弓削の秋祭りで復活しました。
かつて秋祭りは、地縁・血縁で成り立っていました。しかし、地域の過疎化による祭りの担い手の不足は、喫緊の課題となっています。祭りの継続のために、伝統とともに地域間の協力や進取の気性が求められています。