飛躍する地域学
2017年01月26日 有馬 啓介
積善山から上島諸島と魚島群島を望む
近年、日本の各地で地域学の振興に積極的に取り組む自治体や研究・教育機関、NPO、地域住民等が増えています。その地域学の代表的なものに「東北学」「山形学」「江戸東京学」、そして、地元の「愛媛学」、お隣の「尾道学」が挙げられます。また、「群馬学」を提唱している群馬県では、一郷一学運動として市町村単位での地域学が多く見られます。特に、近代技術による日本初の本格的製糸工場となった富岡製糸場が所在する富岡市では、世界遺産への登録を契機に「富岡学」の活動が活発化しています。地方創生とあいまって、地域学は今後も各地で推進されることでしょう。
このように、地域学の対象とする地域には空間的な制約がなく、市町村といった基礎自治体よりもさらに小さな地域での取り組みも考えられます。元来、地域学とは、特定の地域について、人文科学、社会科学、自然科学的な側面から研究する学問であり、学際的なものです。地域学の大きな特徴は、その多様性なのです。
前述した各地の地域学には、純粋な学問の要素に加え、生涯学習の要素が含まれています。地域を学ぶということは、地域の資源や誇りを見つけることであり、地域の課題を知ることでもあります。それは、人がよりよく生きるために、日々の生活から見直すことと同じことです。そして、地域学の成果は、魅力的で活力ある地域づくりの第一歩となるのです。
かつて、考古学者の森浩一は、「考古学は地域を元気にする」という言葉を遺しました。考古学のみならず、地域を元気にする地域学を構成する分野は無数にあります。それは、地域学が親しみやすく開かれた「学」であることを表しています。